事業主借と事業主貸の使いどころと使い分け

事業主借と事業主貸

法人であれば、現金も預貯金の口座も明確に区別されており、事業用の口座から社長の個人的な支出や入金など発生しない前提です。
ところが個人事業主の場合は、事業用の入出金と個人用の入出金が明確に区別できていない前提の仕組みのため、うまく使い分けるために利用する方法が、家事按分と事業主借・事業主貸勘定です。

家事按分については家事按分の仕訳方法と割合の決め方の記事を参照してください。

今回はこの「事業主借」勘定と「事業主貸」勘定について解説いたします。

目次

「事業主貸」勘定の使い方

事業用に使っている銀行口座から事業とは関係ない個人的な支出があった場合や
事業の収入を個人の財布に受け取った場合に利用します。

完全な個人的な支出であれば記帳をしないで無視してしまいたい気持ちになりますが、完全に無視してしまうと口座の残高が合わなくなってしまうので、仕訳を起こしつつ、これは事業とは関係ないですよと分かるようにするために使います。

具体例

事業用の口座から完全に私物用の漫画(450円)をネットで購入し、銀行振り込みで支払った。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
事業主貸
税対象外
450円普通預金
税対象外
○○銀行△△支店450円個人分

個人口座の生活用に20万円出金した。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
事業主貸
税対象外
200,000円普通預金
税対象外
○○銀行△△支店200,000円社長 引き出し

生徒さんの月謝5,000円を直接受け取り、財布に入れた。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
事業主貸
税対象外
5,000円売上
課税売上10%
月謝5,000円○○さま
1月分月謝

ホームセンターで事業用の文房具2,500円と個人用の靴下300円を事業用クレジットカードで購入した。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
消耗品費
課税仕入10%
文房具2,500円未払金
税対象外
ABCクレカ2,800円BBCホームセンター 文房具
事業主貸
税対象外
300円BBCホームセンター 個人分

車の燃料代1万円を個人事業割合70%で家事按分した。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
車両費
課税仕入10%
文房具3,000円普通預金
税対象外
○○銀行△△支店10,000円○○石油 燃料代
事業主貸
税対象外
7,000円○○石油 個人分

家事按分について家事按分の仕訳方法と割合の決め方の記事で詳しく解説していますのでこちらも参照してみてください。

その他代表的な事業主貸になる支出(経費にできないもの)

  • 社長個人の「所得税」や「住民税」など
  • 社長個人の「国民健康保険料」や「国民年金保険料」、「介護保険料」などの社会保険料

※個人事業税は経費にできるので「租税公課」になります。

「事業主借」勘定の使い方

事業用に使っている銀行口座に事業とは関係のない入金のあった場合や
個人の財布から事業用の支出をした場合に利用します。

具体例

事業主の個人的な財布から事業用に使うパソコン(6万円)を買った

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
消耗品費
課税仕入10%
60,000円事業主借
税対象外
60,000円パソコン購入

決済用に銀行口座に15万円入金した。

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借方勘定科目借方補助科目借方金額貸方勘定科目貸方補助科目貸方金額摘要
普通預金
税対象外
○○銀行△△支店150,000円事業主借
税対象外
150,000円社長 預け入れ

決算時の残高について

この事業主貸借勘定は決算時には相殺して、元入金に合算又は差し引かれます。

そのため、簡略化して初めから事業主借か事業主貸のどちらかのみを使う(場合によってはマイナスになる)場合もあります。この方法でも決算時には元入金に合算されるので最終的には同じことになりますので問題はありません。

まとめ

事業主貸借勘定は主に事業用銀行口座の個人利用分を調整したり、逆に事業外口座や個人現金から利用した経費分を計上するために使う科目です。
そのため、個人分と事業用がはっきり分かれている法人の場合は使わない勘定科目です。

また、特に個人事業主の場合は現金残高をしっかり管理していることは少ないと思いますので、初めから現金勘定は使わずに事業主貸借勘定で処理をした方が管理が楽になると思いますのでお勧めです。

この記事が皆さんのお役に立てればうれしいです。

事業主借と事業主貸

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この記事を書いた人

経理部では特異なExcelスキルを活かしつつ部署内の業務改善で紙運用・手書き・二度手間・手入力などの無駄作業改善を進め、大幅な工数削減を実現しました。その成果もあり、M&Aで子会社(経理業務はすべて本社で処理)が8社から10社まで増えていきましたが、経理部門では定年退職等でむしろ人数が減っているにもかかわらず、全員残業無しで暇な時間すらある状態を維持できています。

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