毎月の未払金の計上をやめて工数削減してもいいのか

未払金やめる

費用の発生日と支払日が月をまたいでしまう場合は未払金の勘定科目を使ってそれぞれ仕訳を起こす必要があります。しかし、一つの費用に対して発生時と支払時の二つの仕訳を起こすので、倍の仕訳になり経理担当からすると面倒な仕訳の一つになってしまいます。これが支払時だけの仕訳で良ければ仕訳数が少なくなるので楽になるのですが、そんなことをしてもいいのでしょうか。

税法上の問題の有無でいえば未払金を毎月計上する必要はありません。
しかし、未払金を毎月計上した方がメリットがある場合もあります。

今回は未払金を毎月計上するか、決算時のみ計上するかどちらの方がメリットがあるかを検証してみたいと思います。

目次

未払金の計上例

費用発生と支払が月をまたぐ場合

費用が発生した月の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
水道光熱費
課税仕入10%
13,000円未払金
税対象外
13,000円○月分 電気料金
費用発生時

費用を支払った時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
未払金
税対象外
13,000円普通預金
税対象外
13,000円○月分 電気料金
支払時

費用を支払った時の未払金の仕訳を起こす際には、費用が発生した時の未払金の仕訳と金額が一致しているかどうかをきちんと確認する必要があります。

ここで金額がズレていると未払金に不明な残高や不明なマイナス残高が発生してしまい、時間がたつにつれて内訳が分からなくなってしまいますので注意が必要です。

未払金を毎月計上した方が良い場合

未払金を毎月計上することでメリットが発生するのは以下のようなケースです。

  • 毎月の損益を正しく把握したい場合
  • 毎月の発生金額が毎月大きくぶれる場合

具体例

毎月の外注費が以下のようなケースを見てみましょう。

発生月売上外注費粗利率
1月1,000,000円600,000円40%
2月20,000円12,000円40%
3月500,000円300,000円40%

未払金を計上して正しく発生した月に外注費を計上していれば売上と外注費はそれぞれ大きく増減していますが、粗利率は毎月40%で安定しています。

今度は外注費の支払いがひと月ずつ後ろにずれた場合を見てみます。

発生月売上外注費粗利率
1月1,000,000円50,000円95%
2月20,000円600,000円-29,000%
3月500,000円12,000円98%

粗利率が-29,000%から98%まで大きくぶれているのが分かります。

毎月の損益状況を把握しようとした場合このような状態ではもうかっているのかもうかっていないのか全く判断することができません。このような場合は毎月未払金を計上して正しい月に経費や仕入を発生させるようにした方が良いでしょう。

未払金の計上は決算のみで良い場合

未払金を毎月計上することのメリットが少ないのは以下のようなケースです。

  • 毎月の損益はそこまで重要ではない場合
  • 毎月の発生金額にそこまで大きな金額差が無い場合

具体例

毎月の電気料金が以下のようなケースを見てみましょう。

発生月売上電気料以外の経費をと仕入を
差し引いた営業利益
電気料金営業利益率
1月800,000円500,000円13,000円64.1%
2月800,000円500,000円15,000円64.4%
3月800,000円500,000円16,000円64.5%
4月800,000円500,000円14,000円64.3%
5月800,000円500,000円12,000円64.0%
6月800,000円500,000円10,000円63.8%

今度は外注費の支払いがひと月ずつ後ろにずれた場合を見てみます。

発生月売上電気料以外の経費をと仕入を
差し引いた営業利益
電気料金営業利益率
1月800,000円500,000円12,000円64.0%
2月800,000円500,000円13,000円64.1%
3月800,000円500,000円15,000円64.4%
4月800,000円500,000円16,000円64.5%
5月800,000円500,000円14,000円64.3%
6月800,000円500,000円12,000円63.0%

毎月の利益の推移はほとんど変化が無いことが分かります。このような科目が多い場合は未払金の残高がズレるリスクと毎月多くの工数を割いてまで未払金を計上する必要はないでしょう。

まとめ

未払金は毎月計上すれば月次の損益を正しく把握することができるため、一定の規模の法人になれば毎月計上されているところもあると思います。
しかし、個人事業主様や経営者さんがそこまで細かく損益を見る必要が無いと判断される場合は決算のみ計上でも税法上の問題はありません。効率化をとるか月次損益の正確性をとるかは経営者さんのセンスでご判断いただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が皆さんのお役に立てていただければ幸いです。
ご意見やご感想がありましたら、ぜひコメント欄でお知らせください。
また、次回の記事もお楽しみに!

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この記事を書いた人

経理部では特異なExcelスキルを活かしつつ部署内の業務改善で紙運用・手書き・二度手間・手入力などの無駄作業改善を進め、大幅な工数削減を実現しました。その成果もあり、M&Aで子会社(経理業務はすべて本社で処理)が8社から10社まで増えていきましたが、経理部門では定年退職等でむしろ人数が減っているにもかかわらず、全員残業無しで暇な時間すらある状態を維持できています。

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