【2026年版】正社員1人の本当のコストは月給の何倍?年間総額シミュレーター付き完全ガイド

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正社員VS業務委託

「うちに来てくれるって若手がいるんだけど、これ、実際いくら出ていくんだろう?」

社員5人くらいの会社で、6人目を雇うかどうかって、もう本気で悩みますよね。売上はじわじわ伸びてきたけど、銀行返済もあるし、月の固定費が一段増えるのは正直こわい。社労士に「いくらかかります?」って聞くにはちょっと話が早すぎるし、税理士に踏み込んで聞くのも気が引ける。でも、雇ってから「こんなはずじゃなかった」では取り返しがつかない。だからこうやって、夜中に検索バーに「正社員 コスト 計算」って打ち込まれているんだと思います。私もその気持ち、すごく分かります。

で、いざ調べると最初に出てくるのが、「給与の1.5倍が目安です!」という話。これ、ぶっちゃけ半分正しいです。 法定福利費(社会保険の会社負担分)だけなら給与の15〜17%が乗るので、賞与込みでざっくり1.5倍、というのは間違っていません。でも、実際に毎月会社から出ていくキャッシュは、それじゃ収まらないんです。退職金の引当、採用にかかった広告費と面接の時間、入社後3か月の「まだ稼げない人件費」、PCや作業着、健康診断、有給消化分…全部積み上げると、リアルな倍率は 1.6〜1.8倍。月給28万円の社員1人なら、年間で 約580万〜630万円 が現実的なラインになります。

実は支援先のお客さんで、ここ1〜2年で初めての正社員を採用された方が何人かいらっしゃるんですが、ほぼ皆さん同じことをおっしゃるんですよ。「給与30万のつもりだったのに、毎月実際に出ていくのは50万近い」って。これがまさに月給の1.6〜1.8倍ライン。給与明細だけ見ていたら絶対に出てこない数字が、現実には毎月、淡々と通帳から消えていくんです。

申し遅れました。私は「めぐめぐ業務サポート」という会社で、中小企業のバックオフィス代行をやっている者です。経理・会計の実務はかれこれ 10年以上、累計5〜10社のクライアントの給与計算や社会保険の納付を毎月回している現場の人間です。同時に、自社では正社員を1人も雇わず、約20名の業務委託メンバー でチームを動かしている経営者でもあります。なので「正社員を雇うコストの中身」も「あえて雇わずに回す側の現実」も、両方の手触りで知っている立場で書いています。Excel解説ブログも運営していて、月間で数万PVほど読まれていますので、計算ロジックの精度には少しだけ自信があります。机上の話じゃなく、毎月、実際に給与と保険料を計算して振り込んでいる人間 が書いた記事だと思って読んでもらえれば嬉しいです。

この記事ではこんな順番でお話ししていきます。

①月給に乗ってくる「7つのコスト要素」を分解
②2026年度の最新保険料率(協会けんぽも雇用保険も今年度から数字が変わっています)
③月給22万・25万・28万・30万・35万の リアル年間コスト早見表
④自社のケースを正確に試算できる 無料Excelシミュレーター(公式LINE登録でお渡しします)
⑤雇うために必要な「売上の増加額」を粗利率別に逆算
⑥業務委託・派遣・パートとの構造比較
⑦キャリアアップ助成金で 最大140万円 戻ってくる話
⑧「今、雇うべきか否か」を判断する5つのチェック項目

読み終わるころには、「給与の1.5倍は神話だった」とハッキリ分かるだけでなく、自社の月給◯◯円の場合に年間いくら必要で、毎月いくらの粗利増があれば回るのか、そもそも今は雇うべきタイミングなのか まで、自分の言葉で説明できる状態になっています。夜中に1人で悩んでいた問題に、明日から動ける答えを持って帰っていただく、ここまでお連れするのがこの記事のゴールです。

最後に、先に結論を置いておきますね。正社員1人にかかる本当のコストは月給の約1.6〜1.8倍。月給28万円なら年間580万〜630万円。 これは脅しでも煽りでもなくて、淡々と数字を積み上げた結果の現実です。雇うのが悪いという話ではまったくなく、「この金額を払う覚悟と勝算があるのか」を冷静に見極めるための材料を、これからお渡しします。それでは、その「1.83倍」がどう積み上がっていくのか、一緒に見ていきましょう。

目次

結論|正社員1人の年間コストは「月給の約1.6〜1.8倍」が現実

長くなる前に、答えを先に置いておきますね。

正社員1人を雇ったときに会社から実際に出ていく年間コストは、その人の 月給の約1.6〜1.8倍。月給28万円の若手社員1人なら、年間で約580万〜620万円 が現実的なラインです。月平均にすると、毎月48万〜52万円が会社から出ていく計算ですね。

「給与28万のはずなのに毎月50万って…ちょっと多すぎない?」と思われた方、その違和感、めちゃくちゃ大事です。実はその違和感の正体こそが、この記事で一番お伝えしたい部分なんです。

「給与の1.5倍」では足りない、たった1つの理由

ネットで「正社員 コスト」と検索すると、「人件費は月給の約1.5倍が目安」という話が必ず出てきます。これ自体は嘘じゃありません。ただ、法定福利費(社会保険の会社負担分)と賞与だけを乗せた数字 なんです。

【用語かんたん解説】法定福利費って何? 「法定福利費」とは、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など、法律で会社が負担を義務づけられている保険料の会社側負担分 のことです。給与から従業員が引かれる保険料とは別に、会社も同額くらいを別途払っています(労使折半といいます)。これが給与のだいたい15〜17%。「会社員の給料明細を見るとガッツリ引かれてるあれ、会社もほぼ同額払ってるんですよ」と言うと、けっこう驚かれます。

この法定福利費に賞与(年2回・基本給2か月分くらい)を足せば、確かに月給の約1.5倍にはなります。ただ、現実に経営をしていると、それで終わらないことに気づくんですよね。雇うとセットで発生するコストは他にもたくさんあって、

  • 退職金の積み立て分
  • 採用にかかった求人広告費・面接の時間
  • 入社後3か月の「まだ稼げないけど給与は満額払う」期間の機会損失
  • PC、デスク、作業着、工具、健康診断
  • 有給消化分(働いてないけど給与が出る日)

こういう「給与明細には載らないコスト」が、雇った瞬間からじわじわ積み重なっていきます。これらを全部入れて初めて「正社員1人の本当のコスト」になるわけです。

ちょっと余談ですが… 中小企業の経営者さんとお話していると、けっこうな割合で「給与+ボーナス=人件費」という認識で止まっている方がいらっしゃいます。実は私自身、めぐめぐ業務サポートを始める前は同じ感覚でした。会社員時代は「自分の月給は会社にとってのコスト」だと素朴に思ってたんですよね。でも実際にチームを動かして、契約書から支払いから税金処理まで自分でやるようになると、「これ、月給の1.5倍じゃ全然収まらないぞ…」と肌で分かるようになります。だからこの記事では、見落とされがちな部分まで全部分解してお伝えしていきます。

月給28万円の正社員、年間総額の中身ざっくり

具体的にどう積み上がっていくのか、月給28万円のケースで先に全体像を見ておきましょう。1つ1つの詳しい根拠は後の章で順番に解説していくので、今は「ふーん、こんな感じで膨らむのか」くらいの感覚でOKです。

項目年間金額(目安)
給与本体(月給28万円×12か月)約336万円
賞与(基本給の2か月分・年2回)約56万円
残業代(月15時間想定)約45〜48万円
通勤手当(月1万円×12か月)約12万円
法定福利費(会社負担分)約65〜75万円
退職金引当(中退共・月1万円)約12万円
採用・教育・設備(初年度均し)約30〜70万円
年間総額約580〜620万円

月給28万円が、あれよあれよと 約580〜620万円。まさに 月給の約1.83倍 に膨らんでいるのが見えると思います。これが「給与の1.5倍説」では拾いきれない、リアルな数字です。

「ボーナス2か月分って多すぎでは?」と思われた方へ 中小企業の場合、業績連動でボーナスを年1か月分しか出さない会社、あるいは出さない会社もあります。その場合は年間コストが30〜40万円ほど下がります。逆に大手や好調な企業だと年4〜5か月分のところもあるので、ここは自社の実情に合わせて調整してください。後半で配布する 無料Excelシミュレーター では、賞与の月数も自由に変えて再計算できますので、自社のケースをそのまま当てはめてもらえます。

この章の結論:「人件費=月給×12か月」という認識を、ここで一回アップデートしてください

私の意見をはっきり言いますね。中小企業で雇用判断を間違える最大の原因は、「人件費=月給×12か月+ボーナス」と素朴に計算してしまうこと だと思っています。実際、累計5〜10社のクライアントさんとお仕事をする中で、「雇ってから初めて法定福利費の重さに気づいた」という話は本当に何度も聞きました。

逆に言えば、雇う前に「月給の1.6〜1.8倍」という現実的な倍率さえ握っておけば、過剰な期待も無謀な賭けもしなくて済みます。

ここから先は、この約580〜620万円が 何にどう積み上がっているのか を、要素ごとに分解していきます。1つずつ分けて見ると、「ここは削れる」「ここは増やしたほうがいい」と、自社のケースに当てはめて柔軟に判断できるようになりますよ。次の章で、コストを構成する 7つの要素 を順番に見ていきましょう。

なぜ「1.5倍」では足りないのか|正社員コストを構成する7つの要素

前章で「月給の約1.6〜1.8倍」と言いました。じゃあ具体的に、月給以外に何が乗ってくるのか?ここを分解しないと、自社のケースに置き換えて考えられませんよね。

正社員1人を雇うときに発生するコストは、大きく分けて 7つの層 で成り立っています。1つずつ見ていきましょう。専門用語が出てきますが、その都度かんたんに補足するので安心してください。

①給与・残業代・賞与|「基本給」だけ見ても始まらない

雇うときに最初に決めるのが基本給。これが「月給28万円」の正体です。でも会社が払うのはこれだけじゃありません。

  • 基本給(毎月固定で払う額)
  • 残業代(法定労働時間を超えて働いた分の割増賃金。1.25倍〜)
  • 賞与(ボーナス。年2回・基本給2か月分が中堅中小の中央値あたり)
  • 各種手当(職務手当、役職手当、資格手当など)

中小企業の場合、「うちは固定残業代込みで月給◯万円」と設計している会社も多いと思います。固定残業代は便利ですが、想定時間を超えて働かせた場合は別途追加で残業代を払う必要があります。

【ちょっと余談】「うちはみなし残業30時間で月給28万」って設計、結構あぶないかも 固定残業代で「月◯時間分込み」とする設計、契約書に明記していなかったり、想定時間が労使で握れていなかったりすると、後から「未払い残業代があります!」と労基署に駆け込まれるケースがあります。中小企業の労務トラブルで一番多いパターンの1つです。雇う前に、ここは顧問社労士さんに一度チェックしてもらうのを強くおすすめします。

②法定福利費|給与の約16.5%が「自動的に」会社負担になる

ここが一番ボリュームの大きい「見えないコスト」です。社会保険・労働保険の事業主負担分のことで、給与のだいたい 15〜17% が、雇った瞬間から会社の負担としてくっついてきます。

月給28万円の社員1人なら、毎月約4万6,000円、年間で約65〜75万円が法定福利費として消えていきます。賞与にも同じ割合でかかるので、ボーナス支給月はさらにドンと乗ります。

詳しい内訳と最新の料率は、次の章で1つずつ解説します。ここではひとまず「給与の16%強が固定で乗る」とだけ覚えておいてください。

③通勤手当・住宅手当・家族手当|「給与外」だけど社保の対象になる落とし穴

意外と見落とされるのがここ。

通勤手当って、月15万円までなら 所得税は非課税 ですよね。なので「これは給与じゃないからセーフ」と思っている経営者さん、多いです。でも 社会保険料の算定基礎には含まれます。つまり通勤手当を月1万円払うと、その分も標準報酬月額に乗って、健康保険料・厚生年金保険料が会社・従業員ともに増えます。

地方の会社、特に車通勤がメインの内装業や建設業の場合、ガソリン代として月1〜2万円の通勤手当を出すケースが多いと思います。1人あたり年間12〜24万円。これも会社負担です。

住宅手当・家族手当を出している会社なら、それも同じく社保算定の対象。「手当は給与とは別物」という認識でいると、後で社労士さんから来る算定基礎届の数字にビビることになります。

④退職金・退職給付引当|雇い始めた瞬間から「将来の支払い」が発生する

退職金制度って、義務じゃありません。「うちは退職金なし」でも法律違反ではない。ただ、現実問題として、退職金ゼロで長く勤めてもらうのは正直キツいです。特に若手の現場管理を雇うなら、「将来の安心」をどう設計するかが定着率に直結します。

中小企業でよく使われるのが 中小企業退職金共済(中退共) という国の制度。月額5,000円〜30,000円から選んで積み立てると、退職時に従業員にまとめて支払われる仕組みです。

【用語かんたん解説】中退共って何? 国(独立行政法人勤労者退職金共済機構)が運営している中小企業向けの退職金制度です。会社が毎月掛金を払うだけで、退職金の管理・運用・支払いは全部国がやってくれます。掛金は全額損金(経費)扱いになるので、法人税の節税効果もあって優秀。新規加入時には国から助成もあります。

月1万円積み立てるなら年間12万円のコスト。「今すぐ出ていくお金」ではなく「将来必ず払うお金」なので、引当(積み立て)として毎年計上していくのが筋です。

⑤採用コスト|求人広告だけじゃない、「経営者の時間」が一番高くつく

意外と侮れないのがここ。中小企業の場合、ハローワークなら無料で求人を出せますが、正直なところ応募がほとんど来ないことも多いです。少しまともな応募が欲しければ、有料の求人媒体を使うことになります。

【2026年時点の主な求人媒体の料金感】

  • ハローワーク:無料(応募率は有料媒体に劣る)
  • Indeed(スポンサー求人):クリック課金型。1職種あたり最低月3〜5万円から、応募をしっかり集めたいなら月10〜20万円が目安
  • タウンワーク社員プラン(WEB+紙):1週間1.1万〜2.1万円から(エリアによる)。月換算で約5〜8万円
  • リクナビNEXT:2025年4月から従来の固定料金プランが終了し、Indeed PLUS経由のクリック課金型に変更。最低3,000円から運用可能、平均クリック単価は400〜800円
  • マイナビ転職・エン転職など:固定掲載型で残っており、4週間18万円〜が中心
  • 人材紹介(成功報酬型):理論年収の30〜35%が手数料相場。例:年収400万円の人材を採用すると120〜140万円

【知っておきたい業界動向】2025年4月から求人媒体の世界が大きく変わりました リクナビNEXTやタウンワークなどリクルート系の媒体が、Indeed PLUSという仕組みで一括配信される形に再編されています。「リクナビNEXTに30万円払う」みたいな世界はもう昔の話。今は「クリック数に応じて課金される」のが主流になっていて、最低3,000円から始められる代わりに、運用次第で効果が大きく変わるようになりました。月の予算を決めて、使い切ったら停止、というコントロールがしやすくなったのは中小企業にとっては朗報ですね。

中小企業の中途採用1人あたりの平均コストは、マイナビの「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」によれば 約31.2万円 という結果が出ています。ただし、これはあくまで平均値。業種や採用ターゲットによって大きく差があり、即戦力やエンジニア・専門職を求めるなら 50〜100万円超 になるケースもあります。人材紹介を使えば、年収400万円クラスの人材1人で 120〜140万円 が成功報酬として飛びます。

そして、これ以上に重いのが 経営者の時間 です。求人原稿を書く時間、応募者の書類選考、面接の段取り、面接そのもの、合否連絡。1人採用するのに、社長さんが5〜10時間使うのはザラです。社長の時給を5,000〜10,000円換算で見れば、それだけで5〜10万円分の機会損失。

私自身、めぐめぐ業務サポートで業務委託メンバーを募集するときも、「いい人を選ぶための面接コスト」が一番重いと感じます。雇用契約ほど解雇規制がない業務委託でさえ、ミスマッチを防ぐためには時間をかけて見極めないといけません。これが正社員ともなると、見極めの工数は数倍になりますし、何より「失敗できない」プレッシャーが段違いです。

⑥教育・研修コスト|戦力化までの「稼げない3か月」が一番高い

ここが、私が支援先を見ていて 一番見落とされやすいコスト だと感じる部分です。

入社直後の3〜6か月って、給与は満額払っているのに、生産性は半分以下。現場で言えば「先輩について見て覚える期間」「単独で見積もりが取れない期間」「ミスをカバーするのに別の人手が必要な期間」です。月給28万円の社員が、最初の3か月は生産性50%だとすると、

28万円 × 3か月 × 50% = 42万円分の機会損失

これが「教えるコスト」の正体です。さらにOJTを担当するベテランが、自分の業務を中断して新人指導に時間を使うので、その分の生産性も落ちます。

ここがしんどいのは、この機会損失は会計帳簿に出てこない ということ。「給与は払っているのに、思ったように動いてくれない…」という社長さんのモヤモヤの正体は、実はここなんですよね。

【私の意見】経営者が一番見落とすのは⑤と⑥です 7つの要素の中で、最も致命的なのは 採用コスト(⑤)と教育コスト(⑥) だと思っています。求人広告費よりも、入社後3か月間の「稼げない人件費」のほうがはるかに重い。新人が定着せず3か月で辞めると、給与・社保で約170万円、機会損失で約42万円、採用コストで20〜50万円、ざっくり合計で 200万円超が水に消える 計算になります。雇うか迷うときは、「失敗したときの損失」も込みで考えるのが、私の感覚ではフェアな見積もり方です。

⑦設備・備品・福利厚生・健康診断|地味だけど確実に乗ってくる固定費

最後がここ。1人雇うと、付随して必要になる物がけっこうあります。

  • PC・スマホ(事務系なら10〜20万円、現場系でもタブレット5〜10万円)
  • デスク・椅子・ロッカー(5万〜10万円)
  • 作業着・安全靴・工具(業種により5〜20万円。建設・内装業は特に重い)
  • 名刺・社章・社員証・社用車の鍵
  • 健康診断(年1回・1人5,000〜15,000円が法律上の義務)
  • 福利厚生費(任意:歓送迎会、慶弔費、レクリエーション費など)

設備・備品は初期費用が大きいですが、初年度に均すと20〜50万円くらい。健康診断は毎年継続的にかかります。

【業種別の補足】内装工事・建設業の場合 作業着・安全靴・工具・ヘルメット・安全帯・電動工具など、現場系は1人あたり初期で 20〜30万円 かかることもあります。さらに玉掛け・フルハーネスなどの特別教育の受講料、職人の場合は資格取得支援も。一般事務系の倍以上のコストが見込まれるので、後ほど出す早見表の数字に プラス10〜20万円 を頭に入れておくのが現実的です。


この章のまとめ|「月給」しか見ていないと約2倍の差を見落とす

7つの要素を整理するとこうなります。

要素内容月給28万円の場合の年間目安
①給与・残業代・賞与基本給+残業代+賞与約440〜450万円
②法定福利費社保・労働保険の会社負担分約65〜75万円
③通勤手当・諸手当通勤手当・住宅手当など約12〜24万円
④退職金引当中退共などの積立約12〜36万円
⑤採用コスト求人広告・面接工数約10〜50万円
⑥教育・研修コスト戦力化までの機会損失約30〜50万円
⑦設備・備品・健康診断PC・作業着・健診費用約10〜30万円
合計約580〜700万円

数字に幅があるのは、業種・年齢・地域・採用媒体によって変わるからです。月給28万円のスタンダードケースで 約580〜620万円、業種や採用条件によっては 約700万円 までいくこともある、というのがリアルな姿です。

次の章では、このうち最大のボリュームを占める ②法定福利費 を、2026年度の最新料率で1つ1つ分解していきます。「会社が給与の何%を負担しているのか」をちゃんと数字で押さえておくと、後ほど出す月給別の早見表が一気に腑に落ちますので、ぜひついてきてくださいね。

【2026年最新】法定福利費の内訳と料率|会社負担分は給与の約16.5%

正直に言いますね、このセクションは数字が多くて読み飛ばしたくなる気持ち、すごく分かります。でも、ここを飛ばすと 月給28万円の社員1人につき年間60〜70万円が、何にどう乗っているのか分からなくなります。7要素のうち、給与本体に次いで2番目に重い項目がここなので、5分だけお付き合いください。

最初に結論を置いておきますね。

  • 法定福利費は 6種類の保険料の合計
  • 会社が負担するのは、給与の 約16.5%(一般事業・40歳以上の場合)
  • 月給28万円なら、毎月約4.6万円・年間で約60〜70万円が会社負担として乗る

これを6つに分解していきます。私自身、経理・会計の実務歴は10年以上ありまして、毎月複数のクライアントの給与計算と社会保険料の納付に立ち会っている立場なので、机上ではなく実務でそのまま使える数字 をお伝えします。

【用語かんたん解説】労使折半(ろうしせっぱん)って何? 「労使折半」は、保険料を 労働者と会社で半分ずつ払う こと。ほとんどの社会保険は労使折半で、会社が払うのは保険料全体の半分です。例えば健康保険料率が9.90%なら、会社負担は4.95%、労働者負担も4.95%。後で出てくる「事業主負担」というのは全部、この会社側の半分のことを指しています。一部、労災保険と子ども・子育て拠出金だけは 全額会社負担 という例外もあります。

①健康保険料|2026年度は全国平均9.90%(事業主負担4.95%)

健康保険は、社員やその家族が病気・ケガ・出産したときに医療費を補助したり、休んだ間の給与の一部を支給したりする保険。みんなが普通に病院でカード出して3割負担で済んでいるのは、この保険のおかげです。

中小企業のほとんどが加入している 協会けんぽ(全国健康保険協会) の2026年度料率は、全国平均で 9.90%(労使折半なので会社負担4.95%)。前年度から0.10ポイント引き下げになりました。

ただしここがちょっとややこしいんですが、健康保険料率は都道府県ごとに違います。例えば2026年度は、

  • 最も低い:新潟県 9.21%
  • 最も高い:佐賀県 10.55%
  • 全国平均 9.90%

ご自身の事業所が所在する都道府県の料率を、協会けんぽの公式サイトで確認してください。後ほどお渡しするExcelシミュレーターでは、都道府県を選ぶだけで自動で正しい料率が反映される仕様にしています。

【健保組合に入っている会社の場合】 大手企業が独自に運営している「健康保険組合」に加入している会社の場合、料率は組合ごとに違います。協会けんぽより低いところ(7%台)も、高いところ(11%超)もあります。自社の保険証を見て「○○健康保険組合」と書いてあれば、その組合に直接料率を確認しましょう。

②介護保険料|1.62%(40歳以上の社員のみ・労使折半)

介護保険は、高齢になって介護が必要になったときに使える保険。40歳になった月から保険料を払い始めます。逆に言うと、40歳未満の社員にはかかりません。

2026年度の料率は 1.62%(全国一律・労使折半なので会社負担0.81%)。健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。

月給28万円・40歳以上の社員なら、毎月約2,268円が会社負担として追加で乗ります。

【ペルソナの社長さんへ】 もし採用予定の若手が40歳未満なら、この介護保険料は当面ゼロでOK。でも、定着して長く働いてもらえば、いずれ40歳の誕生日が来てここから自動的に発生します。「長く働いてほしい」と思う社員ほど、いずれは乗ってくる固定費だと認識しておきましょう。

③厚生年金保険料|全国一律18.30%(事業主負担9.15%)

厚生年金は、退職後にもらえる年金の積立て。日本国民みんなが入る国民年金(基礎年金)の上に乗っかる「2階建て」の2階部分にあたります。

料率は全国一律 18.30%(労使折半なので会社負担9.15%)。これは健康保険料より約2倍重い項目で、法定福利費の中で一番ボリュームが大きい ところです。

月給28万円なら、毎月25,620円が会社負担として乗ってきます。年間だと約30万7千円。これだけで結構大きいですよね。

④雇用保険料|一般事業1.35%・建設業1.65%(事業主負担分は0.85%・1.05%)

雇用保険は、失業時の失業給付・育児休業中の給付・職業訓練の費用などの財源。

2026年度は前年度から0.1ポイント引き下げになり、

  • 一般事業:合計1.35%(労働者0.5% + 会社0.85%)
  • 建設事業:合計1.65%(労働者0.6% + 会社1.05%)
  • 農林水産・清酒製造業:建設事業と同じ1.65%

労使折半ではなく 会社のほうが多く負担 する仕組みです。

月給28万円・一般事業なら毎月2,380円が会社負担、建設業なら毎月2,940円が会社負担。

【内装工事業・建設業の社長さん向け】 雇用保険料率は 建設業のほうが0.2ポイント高い です。理由は、建設業は離職率が比較的高く、雇用情勢が変動しやすいから。1人あたり月で500〜600円、年間で6,000〜7,000円ほどの差ですが、地味に効きます。

⑤労災保険料|全額事業主負担・業種で0.25〜8.8%

労災保険は、社員が 仕事中・通勤中にケガや病気をしたとき の補償。労使折半ではなく 全額会社負担 です(労働者の給与からは引かれません)。

料率は業種ごとにバラバラで、危険度に応じて変わります。

業種労災保険料率
一般事業(事務・サービスなど)0.3%
卸売・小売0.3%
建築事業(内装含む)0.95%
機械装置の組立て0.65%
既設建築物設備工事業1.2%
水力発電施設工事(最高)3.4%

※詳細は厚生労働省の「労災保険率表」で要確認

月給28万円・建築事業なら、毎月2,660円が会社負担として乗ります。これも全額会社持ちなので、ジワッと効くタイプのコストです。

⑥子ども・子育て拠出金|0.36%(全額事業主負担)

これも労使折半ではなく 全額会社負担。児童手当や保育所の整備、子育て支援の財源として国に納めます。子どもがいない社員でも徴収されます。

料率は 0.36%。月給28万円なら毎月1,008円。

【小さい金額だけど…】 1人あたり月1,000円程度なので「微々たるもの」と思われがちですが、これも社員数分かかる固定費です。社員5人なら月5,000円、年間6万円。意外とバカにできません。

⑦【2026年4月新設】子ども・子育て支援金

これが2026年度最大のトピックです。2026年4月から、健康保険料に上乗せして「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました

実務上は健康保険料率に内包される形で徴収されるので、給与計算ソフトの料率設定を最新版に更新していれば自動で反映されます。協会けんぽの場合、初年度は平均で 0.15%程度 が上乗せされる見込み(年度進行とともに段階的に引き上げ予定)。

「ややこしいことが増えた」と感じる社長さん、安心してください。実務上は健康保険料率の中で処理されるので、特別な手続きは不要 です。ただ、料率改定の時期(毎年3月決定〜4月適用)には、給与計算ソフトの料率設定を必ず最新版に更新してくださいね。

【私の意見】中小企業の負担はジワジワ増え続ける前提で見たほうがいい この子ども・子育て支援金、社会保障の財源として必要なのは分かるけど、中小企業の経営者からすると「また負担が増えた…」というのが正直なところだと思います。新規雇用とは関係なく既存社員にも一律でかかる話なので雇用判断には直接影響しませんが、「今後5年で社保負担は緩やかに上がっていく」前提で、この記事の数字も少し余裕を持って見ておくのが現実的です。


【2026年度版】事業主負担合計の早見表

ここまでの6種類を全部足したものが「法定福利費の事業主負担合計」です。

業種・年齢事業主負担合計
一般事業・40歳未満15.6%
一般事業・40歳以上16.4%
建設業・40歳未満16.5%
建設業・40歳以上17.3%

※協会けんぽ全国平均使用・賞与含む賃金総額に対する割合の概算。健保組合・都道府県・労災業種により多少前後します。

これを月給28万円のケースに当てはめると、

ケース月の会社負担年の会社負担(賞与含む)
一般事業・40歳未満約43,700円約61万円
一般事業・40歳以上約45,900円約64万円
建設業・40歳未満約46,200円約65万円
建設業・40歳以上約48,400円約68万円

※賞与年2回・基本給2か月分(56万円)想定

第1章で「月給28万円なら法定福利費は年間65〜75万円」と書いた根拠が、ここで全部見えたかと思います。実は、この約60〜70万円という数字、雇った瞬間から固定で発生する んですよね。社員のがんばりや営業状況に関係なく、毎月確実に出ていきます。これが「正社員雇用が固定費化する」と言われる主な理由の1つです。

【経理担当の奥様・ご家族へ】 中小企業だと、奥様や親族が経理を兼務されているケース、本当に多いと思います。社会保険料の計算で肝心なのは、毎月の給与計算年1回の算定基礎届(4〜6月の給与から標準報酬月額を決め直す手続き)の2つ。料率改定は年に1〜2回(3月・10月)あるので、給与計算ソフトの設定更新を忘れずに。私の支援先でも、「料率変更を反映し忘れていて、後から労働局から差額納付を求められた」というケースが時々あります。


ここまでで、法定福利費がどうやって積み上がるのか がスッキリしたと思います。次の章では、ここまでの内容を全部踏まえて、月給22万・25万・28万・30万・35万の5パターンで、年間総コストの早見表 をお見せします。スマホでスクロールしながら、自社のケースに当てはめてみてください。後ほどお渡しするExcelシミュレーターと合わせて使うと、自社の正確な数字がパッと出ますよ。

【月給別早見表】月給22万・25万・28万・30万・35万のリアル年間コスト

お待たせしました。ここから記事の主役パートです。月給22万・25万・28万・30万・35万の5パターンで、それぞれ年間でいくらかかるかを一覧にしました。「自分が雇いたいのは月給◯万円」のところまでスクロールして、自社のケースに当てはめてみてください。

最初に、メインケースとなる 月給28万円 で全体の積み上げを丁寧に見ていきます。ここで計算の構造が分かれば、他の月給パターンもすぐ理解できます。

この章で使う「モデルケース」の前提条件

数字を出していく前に、本章では以下の 1パターンに固定 して計算します。条件をブラさないことで、「自分のケースとどこが違うか」が明確に比べられるようにするためです。

  • 月給:基本給で設定(22〜35万円の5パターン)
  • 賞与:年2回・基本給2か月分
  • 残業代:月15時間想定(割増賃金1.25倍)
  • 通勤手当:月1万円
  • 退職金:中退共・月1万円積立
  • 業種:一般事業(協会けんぽ全国平均料率使用)
  • 年齢:40歳未満(介護保険料なし)
  • 採用・教育・設備:初年度均し計上

業種が建設業の場合や、40歳以上の社員の場合は、法定福利費の割合がここから0.8〜1.7ポイントほど上振れします(前章「事業主負担合計の早見表」をご参照ください)。年間ベースでは数万円〜10万円程度のズレが出ますが、対月給倍率の傾向は変わりません

月給28万円の正社員|年間総額シミュレーション(メインケース)

それでは、月給28万円のケースで実際に積み上げてみます。

項目年間金額補足
給与本体336万円月28万円 × 12か月
賞与56万円基本給2か月分
残業代約45万円月15時間×割増賃金1.25倍
通勤手当12万円月1万円 × 12か月
法定福利費(会社負担)約70万円給与系総額×約15.6%
退職金引当12万円中退共月1万円 × 12か月
採用コスト(初年度均し)約20万円求人広告+面接工数
教育コスト(生産性ロス)約30万円入社3か月分の機会損失
設備・備品・健康診断約15万円PC、デスク、健診費用など
年間総額約596万円月平均 約49.7万円

月給28万円が、最終的に 年間約596万円。月給に対する倍率は 約1.77倍 です。第1章で「月給の1.6〜1.8倍」と書いた、その「1.8倍寄り」のリアルな数字がここに出ています。

【ちょっと脱線しますが…】「月給28万円」の社員が手にするのは22〜23万円 ここまでは「会社視点」の話でした。一方で、その社員の手取り(給与から税金・社会保険料を引いた後の金額)は、月給28万円の場合だいたい 22〜23万円 くらい(独身・40歳未満・住民税課税ありの想定)。会社が約50万円払って、本人の手元に残るのは約23万円。残りの27万円は、税金・社保・会社負担分として、社員以外のところに消えていく計算ですね。これを「日本の労働コストは高い」と言うか「社会保障の充実」と言うかは見方次第ですが、経営者としては 「労働者が手にする金額の倍以上のコストがかかっている」 と認識しておくのが現実的です。

月給別コスト早見表(モデルケース:一般事業・40歳未満・協会けんぽ)

それでは、月給5パターンの早見表です。前提はメインケースと同じ条件で揃えています

月給年間給与系(給与+賞与+残業+通勤)法定福利費(会社負担)退職金・採用・教育・設備年間総額月平均対月給倍率
22万円約362万円約56万円約65万円約483万円約40.3万円約1.83倍
25万円約410万円約64万円約70万円約544万円約45.3万円約1.81倍
28万円約453万円約70万円約77万円約600万円約50.0万円約1.79倍
30万円約485万円約76万円約80万円約641万円約53.4万円約1.78倍
35万円約566万円約88万円約88万円約742万円約61.8万円約1.77倍

※小数点第2位を四捨五入

ご覧の通り、月給がいくらであっても、対月給倍率はほぼ1.77〜1.83倍 に収まります。これが「正社員1人の本当のコスト=月給の約1.8倍」というラインの根拠です。月給が下がると賞与・社保も下がるので、倍率自体は意外とブレません。

「自社の月給◯万円なら、ざっくり×1.8倍が年間コストの目安」、これだけ覚えて帰っていただければ、もうこの記事の最重要ポイントは押さえたことになります。

計算の前提条件をすべて開示します(透明性のために)

「ネット記事の数字、本当に正しいの?」と思われた方のために、上の計算で使った数値・料率をすべて開示しておきます。誠実さの担保として、ぜひご確認ください。

  • 健康保険料率:協会けんぽ全国平均9.90%(2026年度)
  • 介護保険料率:1.62%(モデルケースは40歳未満なので除外)
  • 厚生年金保険料率:18.30%(全国一律)
  • 雇用保険料率:一般事業1.35%(事業主0.85%)
  • 労災保険料率:一般事業0.3%
  • 子ども・子育て拠出金:0.36%
  • 賞与:年2回・基本給2か月分(年間で月給×2)
  • 残業代:月15時間・割増賃金1.25倍想定
  • 通勤手当:月1万円
  • 退職金:中退共・月1万円拠出
  • 採用コスト:年間20万円(求人広告10万円+経営者の選考工数換算10万円)
  • 教育コスト:年間30万円(入社後3か月の生産性ロス・月給×3か月×50%)
  • 設備・備品・健康診断:年間15万円(初年度均し)

【健保組合や住所地によって数千円〜数万円ズレます】 協会けんぽ全国平均で計算しているので、ご自身の都道府県の料率(佐賀県のように10%超のところ・新潟県のように9.2%程度のところ)では、年間で数千円〜数万円のズレが生じます。健保組合に入っている会社の場合は、さらに大きなズレが出ることも。「だいたいこれくらい」の目安としてご活用いただき、自社の正確な数字は次のExcelシミュレーターで出してください。


【無料配布】Excelシミュレーターで自社のケースを正確に試算

ここまでで早見表の数字は掴んでいただけたと思います。ただ、業種・年齢・都道府県・賞与の月数によって、自社の正確な数字は数十万円単位でズレる のが実情です。

そこで、月給・賞与回数・都道府県・業種・年齢を入れるだけで、年間総コストが自動計算されるExcelシミュレーター を無料でお渡しします。

📊 シミュレーターでできること

  • 月給・賞与の月数を変えるだけで瞬時に再計算
  • 都道府県を選ぶと健康保険料率が自動反映(協会けんぽ47都道府県対応)
  • 一般事業/建設業/その他業種の切り替え
  • 40歳未満/40歳以上の切り替えで介護保険料を自動加算
  • 採用・教育・設備のコストを自社の実情に合わせて変更可能
  • 月平均・年間総額・対月給倍率が自動表示

私自身、経理実務で長年使ってきたExcelテクニックを詰め込んだシートです。Excel解説ブログ(月間で多くの方に読んでいただいています)でも紹介している計算ロジックを、そのまま雇用コスト試算に転用できる形 にカスタマイズしました。

📥 お渡し方法:公式LINEに登録いただいた方に無料でお渡ししています。

【LINEで配布する理由】 実は最初、サイトに直接ダウンロードリンクを置こうかと思ったんですが、料率改定(年1〜2回ある)のたびに最新版を再配布する必要があるので、LINE経由のほうが「改定後にすぐ最新版が届く」仕組みにできるんです。一度登録いただければ、料率変更時にも自動的にアップデート版をお送りします。営業メッセージばかり送ることもないのでご安心ください。

「Excelが苦手なんですが…」という方へ シートには 黄色いセル(入力欄) だけが用意されていて、そこに数字を入力するだけで全部自動計算されるようになっています。関数や数式を触る必要はありません。スマホからでも見られますが、入力はPCがおすすめです。


ここまでで、月給ごとのリアルな年間コスト がスッキリ見えたと思います。次の章では、ここから一段進んで「この年間600万円のコストを払うために、年間でいくら売上を増やせばいいのか?」という、経営判断のための逆算をします。

「コストはわかった。でも、雇って大丈夫なのか?」という、本当に知りたいところに踏み込んでいきますので、引き続きお付き合いください。

月の固定費アップを「必要な売上増加額」に逆算する方法

ここからが本記事で 競合がほぼ書いていない 部分です。

「月給28万円で雇うと年間約600万円かかる」、これは前章でハッキリしました。問題は次です。

その600万円を毎年払うために、自社の売上はいくら増えればいいのか?

これが分からないまま雇うと、雇った後に「思ったより資金繰りがキツい…」と気づくことになります。逆に、ここをきちんと逆算しておけば、「これだけ売上が見えてきたら雇うタイミング」という判断軸が腹落ちします。

私自身、累計5〜10社のクライアント企業のバックオフィスを支援していますが、雇って成功する会社と苦しむ会社の違いは、この逆算をしているか・していないか が大きいです。「人手が足りないから雇う」では遅いんですよね。

粗利率別|年間600万円をカバーするのに必要な売上増加額

逆算のキモは「粗利率」です。

【用語かんたん解説】粗利率(あらりりつ)って何? 粗利率は 「売上から原価を引いた残り(粗利益)が、売上に対して何%か」 を示す指標です。例えば100万円の売上で、原価(仕入れや外注費など、その売上を作るのに直接かかったお金)が60万円なら、粗利益は40万円、粗利率は40%。残った40万円から、人件費・家賃・広告費・税金などすべての固定費を払って、ようやく利益になります。

業種ごとの粗利率の目安はこんな感じです。

業種粗利率の目安
飲食店60〜70%
美容室・理容室60〜80%
士業(税理士・社労士・行政書士など)70〜85%
Web制作・コンサル50〜70%
小売業25〜35%
建設業(内装工事含む)20〜30%
卸売業10〜20%

ご自身の業種の粗利率がだいたい何%か、ザックリでいいので頭に置いておいてください。これを使って、年間600万円のコストをカバーするのに必要な売上増加額を逆算します。

粗利率必要な年間売上増加額必要な月間売上増加額
20%3,000万円250万円
25%2,400万円200万円
30%2,000万円167万円
40%1,500万円125万円
50%1,200万円100万円
60%1,000万円83万円

計算式は単純で、年間600万円 ÷ 粗利率 = 必要な年間売上増加額 です。粗利率30%なら、600万円÷0.3=約2,000万円の売上を増やせれば、ちょうど採算が合うラインに乗ります。

【内装工事業の場合】月給28万円の社員1人を雇うと、年間約2,000〜3,000万円の売上増が必要 粗利率20〜30%のレンジで考えると、月給28万円の現場管理を1人雇って年間約600万円のコストが乗るなら、年間で約2,000〜3,000万円の売上増加 が成立して初めて採算が合います。月割で 月170〜250万円の売上増。これは「新人本人の生み出す売上」だけではなく、「社長が自分の手を空けて取れる新規受注分」も含めた数字、と理解するのが現実的です。

「半年は売上ゼロでも払い続ける覚悟」を逆算する

もうひとつ、雇う前に必ずシミュレーションしてほしいのが 「最悪のシナリオ」 です。

正社員を雇うと、業績悪化時にもすぐには減らせません。日本の労働法は労働者保護が強く、解雇規制が厳しい。「業績悪い、来月から辞めて」は基本できないので、業績が落ちても給与は払い続ける必要があります

そこで現実的な目安として、

「最低でも、人件費の6か月分は手元キャッシュとして確保しておく」

これが、私が支援先によくお伝えしている基準のひとつです。月給28万円の社員1人なら、月平均コスト約50万円 × 6か月 = 約300万円 が手元にあるか。これを下回る現預金しかない状態で正社員を雇うのは、正直かなりリスキーです。

なぜ6か月かというと、業績悪化が始まってから「これは戻らないぞ」と判断して、退職勧奨や事業縮小の意思決定をして実行するまで、最低でもそれくらいの時間がかかるからです。「3か月もあれば十分」と思いがちですが、実際には「もう少し様子を見よう」が積み重なって判断が遅れるのが現実なんですよね。

【ペルソナの社長さんへ】銀行返済が月35万円ある会社が雇う前に確認すべきこと 銀行返済が月35万円あるなら、人件費約50万円が乗ると 月の固定支出が85万円増える 計算になります(既存の固定費にプラス)。手元キャッシュとして「最低でも (50万円+35万円)× 6か月 = 約510万円」が確保されているか、まずこれを確認してください。これが厳しいなら、雇う前に半年〜1年、現預金を貯めることを優先する ほうが、結果的にダメージが小さくて済みます。

「雇うタイミング」のチェック式

支援先をいくつも見ていて思うのは、雇うべきタイミングは「人手が足りなくて辛い」ではなく、数字で説明できる状態 になった瞬間だということです。私が現場で使っているチェック式はこんな感じです。

直近6か月の月平均粗利が、人件費約50万円以上 安定して増えている

これが満たされていないなら、まだ雇うフェーズではない可能性が高いです。人手不足を業務委託・パート・効率化で埋めながら、あと数か月この状態が続くかを見極めるフェーズ だと思ってください。

逆にこれが満たされているなら、雇うことで生まれる余白(社長が新規開拓に動ける、営業時間を伸ばせる、受注枠を増やせる)を取りに行くタイミングです。

【私の意見】「数字より気持ち」で雇って失敗する会社が多いです 雇用判断で苦しんでいる支援先を見ていると、ほとんどが「気持ちで踏み切ったけど数字が後からついてこなかった」パターンです。「いい人がいたから」「現場がもう限界だから」「タイミング的に今しかない気がして」、こういう動機で雇ってしまうと、いざ業績が揺らいだときに後悔します。逆に「数字が満たされてから踏み切った会社」は、その後の成長カーブも安定しているケースが多いんですよね。情緒で雇わず、数字で雇う。これが、私が支援を通じて学んだ一番大きな教訓です。


ここまでで、「雇うために必要な売上のリアル」と「手元キャッシュの目安」が見えたと思います。

✅ 年間2,000〜3,000万円(粗利率20〜30%なら)の売上増が必要 ✅ 月平均人件費の6か月分(約300〜500万円)の手元キャッシュが必要

この2つの数字は、雇用判断の核となる指標として記憶に置いておいてください。

ここまで読んで、「正直、まだ雇うのは早いかも…」と感じた社長さんもいらっしゃると思います。そう感じた方ほど、次の章で紹介する『正社員以外の選択肢』が現実的な解になる可能性が高い です。「いきなり正社員」ではなく、業務委託・パート・派遣を含めた段階的なアプローチを次章で見ていきましょう。

雇う前に検討すべき選択肢|正社員と業務委託、構造的な違い6つ

前章で「正直、まだ雇うのは早いかも…」と感じた社長さんへ。

実は雇用判断って、「雇う」か「雇わない」の二択じゃないんですよね。間に 業務委託・パート・派遣 という複数の選択肢があって、それぞれに向いている業務と向いていない業務があります。ここを知っているかどうかで、経営の柔軟性は段違いに変わります。

ここでひとつ、最初にお伝えしておきたい大事な前提があります。

私自身、めぐめぐ業務サポートという会社で約20名の業務委託メンバーでチームを運営している経営者です。「正社員を雇わず、業務委託でチームを組成する」という選択を実践している立場から書いています。 業務委託の良さも限界も、両方を内側から知っている人間の意見として読んでいただければ。

この比較の前提|「人数」ではなく「雇用形態の構造」で比べる

最初に強調しておきたいのが、業務委託と正社員を比較するときの 正しい比較の仕方 です。

ネット上には「業務委託は1人月3万円〜、正社員は1人月50万円〜、だから業務委託のほうが安い!」みたいな比較を見かけることがありますが、これ、フェアな比較じゃありません。なぜなら、

  • 業務委託1人月3万円というのは「特定業務だけを切り出して依頼する」料金
  • 正社員1人月50万円は「フルタイムで会社の業務全般をやってもらう」コスト
  • そもそも業務量と役割が全然違うから、単価で比較しても意味がない

正しい比較の仕方は、「同じ業務量を回すときに、雇用形態としての構造がどう違うか」 です。コストの絶対額じゃなくて、経営リスクの構造を比べる ということ。これを踏まえて、6つの構造的な違いを順に見ていきます。

違い①|採用コスト

項目正社員業務委託
採用の難易度高(応募集めに広告費・時間)低(実績ベースで選定可)
採用にかかる費用1人あたり平均約31万円〜ほぼゼロ(クラウドソーシングなら数千円)
経営者の選考工数5〜10時間/1人1〜2時間/1人

正社員は応募を集めるところから大変ですが、業務委託は 「実績」「ポートフォリオ」を見て選べる ので、選定コストが圧倒的に低いのが特徴です。クラウドワークスやランサーズ、最近だとX(旧Twitter)のフォロワー経由でも十分人材は見つかります。

違い②|教育・戦力化コスト

項目正社員業務委託
戦力化までの期間3〜6か月(給与は満額)即戦力前提
教育コスト月給×3か月×50%=約42万円ほぼゼロ

業務委託は 「すでにできる人を呼ぶ」 のが基本なので、戦力化期間中の機会損失がありません。前章で出した「月給28万円・3か月の機会損失で約42万円」というコストが、業務委託では発生しないんです。

違い③|離職・解雇リスク

項目正社員業務委託
契約終了の難易度高(解雇規制・退職勧奨も慎重に)低(契約期間満了で自然終了)
ミスマッチ時の対応簡単には切れない次の更新で見直し可

ここが正社員雇用の 最大のリスク です。日本の労働法は労働者保護が強く、「合わなかったから来月から辞めて」は基本できません。一方、業務委託は契約期間(多くは1〜3か月)が決まっていて、満了時に更新するかどうかを双方で判断できます。

【誤解されがちなポイント】業務委託でも「都度勝手に切る」のはNGです 業務委託=いつでも自由に契約解除できる、と思われがちですが、実際には 契約書で定めた解除条件に従う必要 があります。例えば「契約終了時は1か月前に通知」と決めていれば、それに従う。とはいえ、正社員のように「合理的な理由がないと解雇できない」という縛りはないので、構造的にはずっと身軽です。

違い④|社会保険・法定福利費の負担

項目正社員業務委託
健康保険・厚生年金の事業主負担給与の約14%(労使折半部分)ゼロ
雇用保険・労災必須加入加入なし
子ども・子育て拠出金0.36%(事業主全額)ゼロ

ここがコスト構造として一番大きい差です。業務委託は社会保険の事業主負担がゼロ。月給28万円の社員に乗ってくる年間約60〜70万円の法定福利費が、業務委託にはまったくかかりません。委託費から差し引かれる源泉徴収(所得税の前払い)はありますが、これは本人が確定申告で精算するものなので会社負担ではありません。

違い⑤|固定費 vs 変動費

項目正社員業務委託
コストの性質固定費(売上ゼロでも発生)変動費(業務量に応じて発注)
業績悪化時の対応すぐには減らせない次回発注を絞れる

ここは前章でも触れましたが、正社員は固定費、業務委託は変動費 です。業績が落ちてキャッシュが厳しくなったとき、正社員はすぐに人件費を下げられない(解雇規制があるので)。業務委託は次の発注量を減らすことで、月単位でコストを調整できます。

ペルソナの社長さんのように 銀行返済が月35万円ある会社 にとって、固定費を増やすのか変動費で対応するのかは、資金繰りの安定性に直結する判断軸です。

違い⑥|スケーラビリティ(増減の柔軟性)

項目正社員業務委託
繁忙期の増員採用に3〜6か月既存パートナーに依頼すれば即日〜数日
閑散期の縮小できない発注量を絞ればOK

業務委託の本当の強みはここだと、私は感じています。業務量に応じて、月単位で発注量を上下できる。繁忙期に「あと20時間お願いします」と頼めるし、閑散期に「今月は半分でお願いします」と調整できる。正社員ではこの柔軟性は絶対に出せません。

比較サマリ表(4形態を並べた全体像)

派遣・パートも含めて、4形態の特徴を一枚にまとめておきます。

項目正社員業務委託派遣パート
採用コスト中(派遣会社経由)
教育コスト低(即戦力前提)低(即戦力前提)
社会保険料ゼロ派遣会社が負担条件で変動
解雇/終了の柔軟性中(契約期間内)
指揮命令自由制限あり自由自由
戦力化までの時間3〜6か月即〜短期即〜短期1〜2か月
コストの性質固定費変動費変動費(割高)半固定費

ただし、業務委託にも限界があります

ここまで業務委託の良さを書いてきましたが、何でもかんでも業務委託で解決できるわけじゃありません。誠実に弱点もお伝えしておきます。

  • 指揮命令の制約:勤務時間・場所を細かく指定したり、社員のように逐次指示を出すスタイルには向きません
  • 機密情報の取り扱い:別途、機密保持契約(NDA)の締結が必要
  • コア業務には向かない:会社の経営判断や、職人技に近い属人的な専門業務は、外注しにくい
  • 長期的な人材育成は難しい:「いずれ幹部になる人材を育てる」みたいな話には向かない
  • チームへの帰属意識:あくまで外部パートナーなので、社員のような一体感は薄め

結論|「定型業務は外注、コア業務は正社員」が現実的な使い分け

私の意見を率直にお伝えすると、業務委託と正社員は 対立する選択肢じゃなく、組み合わせて使うべきもの です。

具体的には、社内の業務を以下の2つに切り分けて考えるのがオススメです。

  1. 定型化できる「周辺業務」(経理、給与計算、SNS運用、資料作成、スケジュール管理、Web更新など) → 業務委託で外注
  2. 会社の核になる「コア業務」(営業判断、現場での職人技、お客様対応の最終責任、経営判断など) → 正社員で内製化

「いきなり正社員を雇って固定費を一気に増やす」のではなく、「まず定型業務を外注で切り出して、社長が空いた時間で本業のコア業務に集中する。その結果として粗利が安定して伸びてきたら、コア業務側で正社員を採用する」。これが、私が支援先で見てきた中で 最もダメージが小さく、成長が早い順番 です。

めぐめぐ業務サポートも、その「外注の選択肢」のひとつです

ちなみに、私が運営しているめぐめぐ業務サポートでも、こうした 中小企業のバックオフィス代行 を約20名のチームで提供しています。

  • 経理・記帳代行
  • オンライン秘書(スケジュール管理、メール対応、出張手配など)
  • SNS・Instagram運用代行
  • 動画編集・ブログ記事作成
  • 資料作成代行

いずれも「正社員を雇わずに済む業務範囲」を切り出して、業務委託として継続的にお手伝いするサービスです。「正社員を雇う前に、まず定型業務を切り出して様子を見たい」という社長さんに合うサービス設計にしてあります。

詳しくは記事末尾でご紹介しますので、興味があればそのまま読み進めてみてください。


ここまでで、「雇う以外の選択肢」 の構造が見えたと思います。「いきなり正社員」ではなく、業務委託で身軽にスタートする → 業務量と質を見極める → 必要な部分だけ正社員化する という段階的な進め方が、リスクと成長のバランス的には一番堅いやり方だと、私は支援先を見てきて確信しています。

次の章では、それでも正社員を雇うと決めた社長さんへ。雇うコストを実質的に下げる方法(助成金など)をご紹介します。

雇用コストを実質的に下げる方法|助成金で取り戻せる金額がある

ここまで「正社員1人に年間約600万円かかる」という重めの数字を見てきました。雇うと決めた社長さんへ、コストを実質的に下げる手段として 助成金 の存在を頭に置いておきましょう。

【先にお伝えしておきたいこと】 私の専門は経理・会計の実務であって、助成金の申請は社労士さんの領域です。ここでは「こういう制度があるよ」という紹介にとどめます。詳細な要件確認・申請可否の判断は、必ず社労士さんへの相談で進めてください。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)|最大140万円戻ってくる可能性

代表的なのが キャリアアップ助成金(正社員化コース) です。有期雇用(契約社員・パート)として6か月以上雇った人を 正社員に転換 したときに支給される制度で、条件次第で 1人あたり最大140万円 が国から支給される可能性があります。

2026年度(令和8年度)の支給額の概要は以下のとおり(中小企業の場合)。

区分支給額の目安
重点支援対象者を有期雇用から正社員化最大80万円(2期に分けて支給)
通常の正社員化40万円(1期のみ)
多様な正社員制度を新たに規定+40万円
正社員転換制度を新たに規定+20万円
【2026年4月新設】情報公表加算+20万円

組み合わせ次第で最大140万円、というのがざっくりの全体像です。

ここで知っておきたいのは、いきなり正社員で雇うとこの助成金は使えない ということ。有期雇用で6か月以上雇い、その後で正社員に転換する 流れで初めて支給対象になります。前章の「業務委託・パートで様子を見てから正社員化」という段階的アプローチは、助成金の観点でも理にかなっているとも言えます。

その他にも、業務改善助成金、人材開発支援助成金、特定求職者雇用開発助成金など、状況に応じて使える制度があります。

【経理屋からのおすすめ】社労士さんに早めに相談を 申請代行は支給額の10〜20%程度の手数料で受けてもらえることが多く、依頼してもプラスが残るケースがほとんどです。要件は年度ごとに変わるので、「正社員雇用を検討するタイミングで、社労士さんに『使える助成金あります?』と一声かける」のが、結局のところ一番確実で早いと思います。


雇用判断と並行して「使える助成金」をチェックしておくと、初年度の実質コストは数十万円〜100万円超下げられる可能性があります。次の章では、いよいよ最終判断のフェーズへ。「結局のところ、自社は今、雇うべきなのか?」、これに答える 3つの判断軸とチェックリスト をお伝えします。

雇うべきか否かを決める3つの判断軸

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。長い記事でしたが、いよいよ最終判断のフェーズです。

「正社員1人に年間約600万円かかる」「業務委託・パート・派遣という選択肢もある」「助成金で実質コストは下げられる」、これらの情報がそろった上で、結局のところ、自社は今、雇うべきなのか? に答えを出していきましょう。

私が累計5〜10社のクライアント企業のバックオフィスを支援している中で見えてきた、雇って成功する会社と、苦しむ会社の違い から、3つの判断軸をご提案します。

軸①|直近6か月で、人件費分以上の粗利が安定的に増えているか

これが 一番大事な判断軸 です。

雇うかどうかを決めるとき、多くの社長さんは「人手が足りなくて辛い」「現場が回らない」を理由にしがちです。気持ちはすごく分かるんですが、これは「雇うべきタイミング」の判断材料としては、実は弱い。

なぜかというと、人手不足は 業務委託・パート・効率化・受注調整 など、正社員以外の方法でも解決できることが多いからです。それなのに「もう限界」というプレッシャーで雇ってしまうと、雇った後で売上がついてこなくて苦しむ、というパターンに陥ります。

正しい判断材料は、こちらです。

直近6か月の月平均粗利が、人件費約50万円以上 安定して増えている

安定して」がポイント。たまたま大きな案件が入った月だけ伸びている、では足りません。毎月コンスタントに、過去より粗利が増え続けている 状態。これが満たされているなら、雇うことで生まれる余白(社長が新規開拓に動ける、営業時間を伸ばせる、受注枠を増やせる)を取りに行くタイミングです。

【支援先で見たパターン】 雇って成功する会社は、ほぼ例外なく「人を雇う前から、社長が忙しすぎて取りこぼしている案件・案件を断っている状態」が続いています。「もし1人増えればこの仕事は受けられた」「自分の手が空けば取れる新規開拓が見えている」という具体的な余白が、数字で見えている。逆に苦しむ会社は、「とにかく現場が回らない、誰でもいいから来てほしい」が動機。雇う前に粗利の増加トレンドが先行しているかどうか、これが分かれ目です。

軸②|採用後に削減できる外注費・残業代・社長の機会損失があるか

2つ目は、見落とされがちな視点です。

「正社員1人に年間600万円」は、確かに重い数字。でも、これを『新規コスト』として捉えると判断を間違えます

正しいのは、「正味の追加負担」を計算すること。具体的には、

  • 雇うことで 削減できる外注費 はいくらか?(例:今、月10万円の外注を切れる → 年間120万円の削減)
  • 雇うことで 削減できる残業代 はいくらか?(例:既存社員の残業を月15万円減らせる → 年間180万円の削減)
  • 雇うことで 社長が解放される時間 の機会損失はいくらか?(例:社長の月間稼働40時間が空く × 時給1万円 = 月40万円の余白)

これらが合計で月20〜30万円分あるなら、正味の追加負担は600万円ではなく、年間240〜360万円程度 に下がります。同じ「年間600万円のコスト」でも、「丸ごと新規負担」なのか「既存コストの置き換えで実質負担はその半分」なのか、見え方は全然違いますよね。

【私の意見】「正味の負担」で考えると判断がクリアになります 経営者さんが「雇うコストが重い」と感じているとき、よくよく聞くと 既存の外注費・残業代・社長の時間 がすでに大きく流れていて、それに気づいていないケースがあります。「雇う」というのは、必ずしも「新規負担を増やす」ことではなく、「既存の流動的なコストを、正社員という固定的な形に置き換える」行為なんですよね。この視点で見直すと、雇うことの実質的なインパクトはかなり違って見えてきます。

軸③|半年は売上ゼロでも給与を払い続けられる手元キャッシュがあるか

3つ目は、第5章でも触れた「最悪のシナリオ」への耐性です。

月平均人件費50万円 × 6か月 = 約300万円

これを下回る現預金しかない状態で正社員を雇うのは、正直かなりリスキーだと、私の支援経験から言えます。

「3か月もあれば十分」と思われがちですが、業績悪化が始まってから「これは戻らないぞ」と判断して、退職勧奨や事業縮小の意思決定をして実行するまで、最低でも6か月はかかるんです。「もう少し様子を見よう」が積み重なって、判断が遅れるのが現実なんですよね。

銀行返済が月35万円ある会社なら、これに加えて (50万円+35万円) × 6か月 = 約510万円 が必要キャッシュの目安。これが厳しいなら、雇う前に半年〜1年、現預金を貯めることを優先するほうが、結果的にダメージが小さくて済みます。


雇用判断チェックリスト(5項目)

ここまでの3軸を踏まえて、最終チェックリストです。1つずつ自社の状況に当てはめて、満たしているものに☑ を入れてみてください。

☐ ①直近6か月の月平均粗利が、人件費約50万円分以上 安定して増えている
☐ ②採用することで、月15〜30万円の外注費・残業代・社長機会損失を置き換えられる
☐ ③手元キャッシュに、人件費の6か月分以上の余裕がある(銀行返済込みで510万円が目安)
☐ ④採用後3〜6か月の戦力化期間に、社長が業務マニュアル化・教育の時間を確保できる
☐ ⑤万一の場合(業績悪化時)の退職勧奨・事業縮小シナリオをイメージできている

このチェックリストの読み方は、こんな感じです。

  • 5つすべて満たしている → 雇うフェーズ。助成金(前章)も活用しながら、前向きに動いてOK
  • 3〜4つ満たしている → 雇える可能性は高いが、満たせていない項目を半年〜1年で埋めてからのほうが安心
  • 2つ以下 → まだ早い可能性が高い。業務委託・パート・効率化 で人手不足を埋めながら、軸①〜③の数字を整えるフェーズ

「迷うなら、業務委託で1〜2か月試してから判断する」のが現実解

私の支援先で、特に印象的なケースがあります。

ある社長さんは、ずっと「正社員を雇いたい」と言っていたんですが、軸①〜③が完全には揃っていなかった。そこで一度、業務委託で1〜2か月、特定業務(経理周り)を切り出して 試してもらったんです。すると、

  • 「業務量はそこまで多くなかった」と気づき、結果的に正社員雇用を見送った
  • 業務委託で済んだ分、月20万円の固定費削減になった
  • 社長の時間が空いて、本業(営業)に集中できるようになった
  • 結果として、半年後に粗利が伸びて、改めて正社員雇用に踏み切れた

…という流れになりました。正社員雇用は急ぐ必要がありません。「まず業務委託で試す → 粗利・キャッシュが整う → 助成金を活用しつつ正社員化」、この段階的な進め方が、私が見てきた中で 最も失敗が少ない順番 です。


ここまでで、雇用判断のための 3つの軸5つのチェックリスト が揃いました。「数字で説明できる状態になってから雇う」、これがこの記事を通して一番お伝えしたかったメッセージです。

最後の章では、これまでお話ししきれなかった よくある質問(FAQ) をまとめておきます。雇用検討の中で出てくる細かい疑問に、最後にまとめてお答えしますので、もう少しだけお付き合いください。

よくある質問(FAQ)

ここまでの本文では触れきれなかった、雇用検討の中で出てくる細かい疑問にまとめてお答えします。気になる項目があれば、目次からピックアップしてご覧ください。

Q1. 賞与(ボーナス)にも社会保険料はかかりますか?

A. はい、かかります。

賞与には、月給と同じく 標準賞与額(千円未満切捨て) に対して保険料率を乗じて社会保険料が算出されます。事業主負担も従業員負担も、月給と同じくらいの割合(合計で約16.5%が会社負担)が乗ります。

なお、標準賞与額には 年度上限 があります(健康保険:年度累計573万円、厚生年金保険:1か月あたり150万円)。これを超える部分には保険料がかかりません。

「賞与は給与と別物」と思っている経営者さんが意外と多いんですが、社保的には基本的に同じ扱いです。月給28万円・賞与年2回・基本給2か月分のケースなら、賞与56万円分にも約9万円の事業主負担が乗っています。

Q2. 法定福利費は経費(損金)にできますか?

A. はい、事業主負担分は全額損金算入できます。

会社が負担する社会保険料・労働保険料は、すべて法定福利費として 経費計上 が可能です。法人なら法人税の、個人事業主なら所得税の課税所得から差し引かれるので、節税効果もあります。

会計処理としては、「法定福利費」という勘定科目で月次または年次に計上するのが一般的です。給与計算ソフトを使っていれば自動で仕訳が起きます。

Q3. 試用期間中も社会保険に加入させる必要がありますか?

A. 原則、必要です。

「試用期間中だから社保は入れなくていい」と思っている経営者さん、けっこういらっしゃいますが、これは誤解です。試用期間でも 雇用契約は成立 しており、社会保険の加入要件(常時雇用、所定労働時間が正社員の4分の3以上など)を満たしていれば、入社初日から加入義務が生じます。

「試用期間中だから」を理由に加入を遅らせると、後から労働局から指摘を受けて遡及加入を求められるケースもあります。詳細な要件確認は、社労士さんへの相談をおすすめします。

Q4. 月給28万円の社員が手にする「手取り」はいくらですか?

A. だいたい22万〜23万円くらいです。(独身・40歳未満・住民税課税あり・扶養なしの想定)

月給28万円から、

  • 健康保険料(本人負担分・約4.95%):約14,000円
  • 厚生年金保険料(本人負担分・9.15%):約25,600円
  • 雇用保険料(本人負担分・0.5%):約1,400円
  • 所得税:約5,000〜6,000円
  • 住民税:約12,000〜15,000円

これらが引かれて、手取り22〜23万円というのが目安です。扶養家族がいる場合や、住民税が課税される前年がある場合(新卒1年目など)は、手取りが少し変わってきます。

Q5. 役員と正社員ではコストがどう違いますか?

A. 役員は雇用保険・労災の対象外ですが、税務処理が複雑です。

主な違いはこんな感じです。

  • 雇用保険・労災:役員は対象外(兼務役員を除く)
  • 健康保険・厚生年金:役員も加入対象
  • 報酬の扱い:給与所得ではなく役員報酬として処理。期中の変更には制約あり (定期同額給与のルール)
  • 賞与:役員賞与は原則 損金算入不可 (事前確定届出給与の届出をしていれば可)

役員と正社員では、コストよりも 税務処理の柔軟性 に大きな差があります。役員報酬の設定は税理士さんと相談しながら決めるのがベターです。

Q6. 個人事業主と法人で、雇用コストは変わりますか?

A. 基本的な保険料率は同じですが、強制加入の条件などが少し違います。

  • 法人:従業員1人からでも社会保険(健康保険・厚生年金)の 強制加入
  • 個人事業主:常時5人以上の従業員を雇う場合に強制加入。それ未満は任意適用
  • 労災・雇用保険:法人・個人事業主問わず、従業員を1人でも雇えば加入義務
  • 事業主自身の保険:法人の社長は会社の社保に加入できるが、個人事業主は国民健康保険・国民年金(労災は特別加入で対応可)

雇用コストの計算ロジックは、基本的には法人・個人事業主で大きな差はありません。

Q7. 建設業の場合、料率はどう変わりますか?

A. 雇用保険料・労災保険料が一般事業より高くなります。

項目一般事業建設業
雇用保険料率(事業主負担)0.85%1.05%
労災保険料率(建築事業の場合)0.3%0.95%
法定福利費合計(40歳未満)15.6%16.5%
法定福利費合計(40歳以上)16.4%17.3%

月給28万円の社員1人なら、一般事業より 年間で約3〜4万円 多めに乗ってくる計算です。労災料率は工事種別によってさらに細かく分かれているので、「内装工事業=建築事業 0.95%」が原則ですが、設備工事を含む場合は1.2%になることもあります。詳細は労働基準監督署または社労士さんに確認をおすすめします。

Q8. 「業務委託で雇う」と「正社員で雇う」、どちらが安いですか?

A. 単純な比較はできません(前章でも触れたとおり)。

業務委託は「特定業務だけを切り出す変動費」、正社員は「フルタイムで業務全般を担う固定費」と、そもそも役割と業務量が違います。比較すべきは コストの絶対額ではなく、雇用形態としての構造(採用・教育・社保・固定費化・柔軟性) です。詳しくは第6章「雇う前に検討すべき選択肢」をご覧ください。


ここまでで、雇用コストに関する主だった疑問は一通りカバーできたかと思います。さらに自社固有のケースで悩まれることがあれば、後ほどご紹介する 無料Excelシミュレーター で具体的な数字を出してみるか、めぐめぐ業務サポートの無料相談をご活用ください。

それでは、最後の章「まとめ」へ進みましょう。

まとめ|「雇う/雇わない」の答えは、数字に出ています

長い記事を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。最後に、ここまでの内容を整理しておきます。

この記事のキーポイント(保存版)

正社員1人の本当のコストは、月給の約1.6〜1.8倍  月給28万円なら年間約600万円。法定福利費・賞与・退職金引当・採用費・教育費・設備費まで含めた現実的な数字。

法定福利費(社保の会社負担)は給与の約16.5%  2026年度の協会けんぽ全国平均は9.90%、雇用保険1.35%、子ども・子育て支援金が4月から新設。健保組合・都道府県・業種で多少前後します。

年間600万円のコストを賄うには、粗利率20〜30%なら年間2,000〜3,000万円の売上増が必要  雇う前に、自社の粗利率と必要売上を逆算する習慣をつけましょう。

「正社員」の前に、業務委託・パート・派遣という選択肢がある  単価で比較するのではなく、雇用形態としての構造(採用・教育・社保・固定費化・柔軟性)で比較すべき。「定型業務は外注、コア業務は正社員」が現実的な使い分け。

助成金(キャリアアップ助成金)で最大140万円戻る可能性がある  いきなり正社員ではなく、有期雇用で6か月以上雇って正社員化すると対象に。詳細は社労士に相談を。

雇うべきか否かは、3つの軸とチェックリストで判断  ①直近6か月の粗利増、②置き換えコストの存在、③半年分のキャッシュ余力。5項目チェックリストで自己診断を。

一番大事なメッセージ|「情緒で雇わず、数字で雇う」

この記事を通して、私が一番お伝えしたかったのはこれです。

雇用判断は、「人手が足りなくて辛い」という気持ちで決めるものではなく、数字で説明できる状態になってから決めるもの

私が累計5〜10社のクライアント企業のバックオフィスを支援してきた中で、雇って成功する会社と苦しむ会社の違いは、本当にここに尽きます。粗利の増加トレンドが先行しているか、置き換えできるコストが見えているか、最悪のシナリオに耐えるキャッシュがあるか。これらが揃ってから踏み切る会社は、雇った後の成長カーブも安定しています。

逆に、これらが揃わないまま「もう限界だから雇う」と踏み切ると、本当に苦しいです。雇うのが悪いのではなく、雇うタイミングが早いと、自社も新しい社員も両方が苦しむ ということなんですよね。

迷ったときは、「まず業務委託で1〜2か月試してから判断する」 のが、私の支援経験から言える一番堅い進め方です。


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この記事を書いた人

あつし/めぐめぐ業務サポート 代表

経理・会計の実務に 10年以上 携わってきた実務家。中小企業のバックオフィス代行を提供する めぐめぐ業務サポート の代表として、累計5〜10社のクライアント企業の経理・労務・契約まわりを内側から支援。

同時に、自社では正社員を1人も雇わず、約20名の業務委託メンバー でチームを運営している経営者でもあります。「正社員を雇うコストの中身」と「雇わずに業務委託で回す現実」、両方の手触りを内側から知っている立場で、数字と現場感の両面から発信しています。

Excel解説ブログも運営しており、月間で多くの方に読んでいただいています。

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    最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。この記事が、社長さんの雇用判断のお役に立てれば嬉しいです。「数字で説明できる状態になってから雇う」、ぜひこの考え方を持ち帰って、ご自身の会社の判断にお使いください。

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