簡易課税制度の計算方法の違いと利用方法について(消費税)

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簡易課税制度
目次

簡易課税制度とは

消費税の納税額を計算するには日常の取引すべてで消費税率を正確に把握したり、各書類の扱いに細かいルールがあったりと事務的な負担が多く発生してしまいます。

そこで個人事業主や中小企業の消費税納税にかかる事務負担を軽減するために簡易的に消費税を計算できる措置として設けられた制度です。

本来の消費税計算とは違う計算結果になりますので、一般課税の計算よりも有利に働いたり不利に働いたりする場合があります。そのため、両社の計算方法をしっかり把握して、皆さんの事業にとってどちらがより有利なのかをしっかり把握したうえで、どちらを選択するか検討してください。

簡易課税制度と一般課税の計算方法の違い

一般課税と簡易課税制度の未払消費税の計算方法の違いについてみてみましょう。

一般課税の計算方法

一般課税の納付税額の計算方法は

仮受消費税仮払消費税納付税額

仮受消費税:売上金額などの収入にかかった消費税
仮払消費税:仕入や経費などの支出に掛かった消費税

で計算します。

具体例として以下の例を計算してみます。
1年間の売上が税込770万円(仮受消費税:70万円)、
1年間の仕入及び経費の支出総額が税込440万円(仮払消費税:40万円)
だった場合

70万円(仮受消費税)-40万円(仮払消費税)=30万円(納付税額)

となり、この年の消費税の納付税額は30万円となります。

簡易課税制度の計算方法

簡易課税の納付税額の計算方法は

売上金額にかかった消費税×(1-みなし仕入率)=納付税額

で計算します。

上の式を見て分かるように支出にかかった消費税は消費税の納付税額の計算には一切関係がないことが分かります。つまり、日々の記帳で支出にかかった消費税を正確に把握しておく手間がないと言う事になります。

具体例として一般課税の計算をした場合と同じ条件の以下の例を計算してみます。

1年間の売上が税込770万円(売上にかかった消費税:70万円)、
事業区分は第4種(みなし仕入率:60%)
だった場合

70万円(売上にかかった消費税)×(1-60%(みなし仕入率))=28万円(納付税額)

となり、この年の消費税の納付税額は28万円となります。

一般課税で計算した場合よりも少し納付税額が安くなりました。

みなし仕入率

上記の具体例で使用したみなし仕入率は皆さんの業種に当てはめたときにどの仕入率が適用されるのかは下記の表から調べることが出来ます。

みなし仕入率一覧表

事業区分みなし仕入率
第1種事業(卸売業)90%
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る))80%
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業)70%
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業)60%
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く))50%
第6種事業(不動産業)40%

みなし仕入率による計算結果の違い

1年間の売上が税込770万円(仮受消費税:70万円)、
1年間の仕入及び経費の支出総額が税込440万円(仮払消費税:40万円)

上記の具体例でいうと

簡易課税でみなし仕入率60%の場合(第4種事業)
70万円(売上にかかった消費税)×(1-60%(みなし仕入率))=28万円(納付税額)

一般課税の場合
70万円(仮受消費税)-40万円(仮払消費税)=30万円(納付税額)

簡易課税でみなし仕入率50%の場合(第5種事業)
70万円(売上にかかった消費税)×(1-50%(みなし仕入率))=35万円(納付税額)

となり、
簡易課税で第4種事業▶一般課税▶簡易課税で第5種事業
の順で納税金額が高くなっていることが分かります。

簡易課税制度を選択できる条件

売上の条件

その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下だった場合。

対象事業者(制度を利用するには)

課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者が対象となります。
なお、新規開業等した事業者は、開業等した課税期間の末日までにこの届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。

まとめ

簡易課税制度のメリット

  • 仕入や経費の消費税率を細かく把握する必要がないので事務工数が少なくて済む
  • 仮払消費税」よりも「売上金額にかかった消費税×(1-みなし仕入率)」の方が大きい場合の場合は節税できる

仮払消費税:仕入や経費などの支出に掛かった消費税

簡易課税制度のデメリット

  • 仮払消費税」よりも「売上金額にかかった消費税×(1-みなし仕入率)」の方が小さい場合はむしろ税負担が多くなる
  • 利用するために届け出が必要
  • 届け出がしてあっても基準期間の売上高によって利用可否が変わるため売上高の確認が必要

私がこれまで見てきた方では、多くの場合この簡易課税制度を利用した方が納付税額が少なくなる傾向にあるようです。
簡易課税制度を利用する権利のある方はぜひご自分の業種に当てはめたときにメリットがあるかどうかを確認したうえで、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
今回の記事が皆さんのお役に立てればうれしいです。

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この記事を書いた人

経理部では特異なExcelスキルを活かしつつ部署内の業務改善で紙運用・手書き・二度手間・手入力などの無駄作業改善を進め、大幅な工数削減を実現しました。その成果もあり、M&Aで子会社(経理業務はすべて本社で処理)が8社から10社まで増えていきましたが、経理部門では定年退職等でむしろ人数が減っているにもかかわらず、全員残業無しで暇な時間すらある状態を維持できています。

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