「えっ!103万円超えたら、10万円以上も税金増えちゃうんですか!?」
私の事務所に駆け込んでこられたのは、売上を順調に伸ばしているものの、パートさんの給与管理に頭を悩ませているという経営者のAさん。確かに、この「103万円の壁」問題で悩む経営者の方は後を絶ちません。
実は私も、ある企業で10社以上の子会社の経理を一括管理している経験から、この問題に関する相談を数多く受けてきました。給与を抑制することで優秀な人材の離職リスクが高まったり、事務作業が煩雑になったりと、企業の成長を妨げる大きな課題となっているのです。
本記事では、「103万円の壁」の廃止時期や、実際の影響額、さらには経理担当者の負担を軽減する具体的な解決策まで、徹底的に解説していきます。
この記事を読めば、「103万円の壁」に振り回されることなく、パートタイマーの方々のモチベーションを保ちながら、効率的な給与管理が可能になります。さらに、経理業務の負担軽減についても、コストを抑えながら実現できる方法をご紹介します。
結論から申し上げると、2024年11月現在、「103万円の壁」の廃止時期は正式には決まっていませんが、その仕組みを理解し、適切な対策を講じることで、むしろビジネスチャンスに変えることも可能なのです。
103万円の壁はいつ廃止になる?最新動向を解説
「103万円の壁」の廃止について、2024年11月現在、具体的な時期は正式に決定されていません。ただし、政府の「女性活躍推進」や「働き方改革」の文脈で、この制度の見直しが継続的に検討されています。
なぜ今、103万円の壁が問題になっているのか?
昨今の人手不足や物価高により、パートタイマーの方々の給与を上げたいという企業が増えています。しかし、「103万円の壁」があることで:
- 企業側:必要な労働時間を確保できない
- 働く側:能力があっても収入を抑制せざるを得ない
- 経理担当:複雑な給与計算に追われる
という三方損の状況が生まれています。
103万円の壁を詳しく理解する
103万円はどう計算される?
103万円は、以下の要素で構成されています:
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除:55万円
重要なポイントとして、通勤費は103万円に含まれません。
例えば:
- 給与収入:100万円
- 通勤費:15万円
- 合計:115万円
この場合でも、給与収入が103万円以下なので、扶養の範囲内となります。
所得税の実際の影響額
次に本人の所得税についてです。
それまでは払わなくてもよかったところから、払う必要が出てくる税金になるので、負担感が大きく感じるかもしれませんが、所得税については、103万円を超えても影響は比較的小さいものです。
具体的な計算例:
年収110万円の場合
課税対象額:110万円 - 103万円 = 7万円
所得税額:7万円 × 5% = 3,500円
つまり年間の税負担の増加額は年間3,500円ほどということになります。
扶養から外れる場合の影響
最も大きな影響が出るのは、本人よりも扶養者の税金です。
扶養控除がなくなる影響:
- 所得税の控除
- 控除額:63万円
- 所得税率:10%
- 影響額:63万円 × 10% = 63,000円
- 住民税の控除
- 控除額:45万円
- 住民税率:10%
- 影響額:45万円 × 10% = 45,000円
合計影響額:年間108,000円となります。 月々の実質収入減:9,000円
これは、スマートフォンの月額料金に匹敵する金額が毎月の家計から消えることを意味します。
配偶者控除の場合は違う!
2018年の税制改正で大きく変わった配偶者控除
配偶者の場合、2018年の税制改正により状況が大きく改善されました。
改正前:
- 103万円を超えると配偶者控除が全額なくなる
改正後:
- 収入103万円まで
- 配偶者控除:満額(38万円)
- 収入103万円超~150万円未満
- 配偶者特別控除に移行
- 段階的に控除額が減少
- 収入150万円以上
- 控除なし
配偶者特別控除:実際の控除額の変化
年収105万円の場合:控除額36万円
年収110万円の場合:控除額31万円
年収115万円の場合:控除額26万円
年収120万円の場合:控除額21万円
年収125万円の場合:控除額16万円
年収130万円の場合:控除額11万円
年収135万円の場合:控除額6万円
年収140万円の場合:控除額3万円
年収150万円以上:控除額0円
注意が必要な会社の配偶者手当
多くの企業では、独自の配偶者手当制度を設けています。
よくある制度例:
- 配偶者の収入が103万円以下:手当20,000円/月
- 配偶者の収入が103万円超:手当なし
このような制度がある場合、年間で24万円の手当がなくなる可能性があります。扶養されている方がお勤めの会社の制度を必ず確認することをお勧めします。
経理担当者の実務上の課題
給与計算の複雑さ
103万円の壁に関連して、以下のような業務が発生します:
- 毎月の給与計算時
- 年収シミュレーション
- 勤務時間の調整
- 各種控除の計算
- 賞与支給時
- 年収試算の見直し
- 支給額の微調整
- 年末調整時
- 扶養控除等申告書の確認
- 配偶者特別控除の計算
- 各種証明書類の収集
このような作業を、パートタイマー全員分、毎月行う必要があります。
効率的な給与計算・経理処理の方法
1. 給与計算ソフトの活用
推奨される機能:
- 年収シミュレーション機能
- 扶養範囲のアラート機能
- データの自動バックアップ
- マイナンバー対応
- 法改正への自動対応
2. アウトソーシングサービス
【主なサービス内容と月額費用の目安】
基本プラン(5-10名規模)
- 給与計算:2-3万円
- 経理記帳:3-4万円
- 年末調整:別途1-2万円
スタンダードプラン(11-30名規模)
- 給与計算:3-5万円
- 経理記帳:4-6万円
- 年末調整:別途2-3万円
※金額は目安であり、サービス内容により変動
3. クラウド会計+サポートサービス
主なメリット:
- 場所を問わずアクセス可能
- リアルタイムでの確認・修正
- 自動仕訳機能による工数削減
- 専門家への相談機能付き
月額費用の目安:
- 基本利用料:1-2万円
- サポート料:1-2万円
- 初期設定費:5-10万円
コスト比較
【年間コスト比較表】(20名規模の会社の場合)
1. 自社対応
- 人件費(パート1名):150万円
- ソフト利用料:10万円
- 合計:160万円
2. 税理士委託
- 基本顧問料:60万円
- 記帳代行:48万円
- 給与計算:36万円
- 合計:144万円
3. 経理代行サービス
- 月額基本料:36万円
- 年末調整:5万円
- 合計:41万円
4. クラウド会計+サポート
- 利用料:24万円
- サポート料:24万円
- 初期費用:10万円(初年度のみ)
- 合計:58万円(初年度)
実務担当者向けアドバイス
給与計算の効率化のコツ
- 年間スケジュールの作成
- 毎月の給与計算日を固定
- 賞与の支給時期を考慮
- 年末調整の準備時期を設定
- 従業員との協力体制
- 扶養状況の定期確認
- 収入見込みの共有
- 勤務時間の調整ルール設定
- デジタル化の推進
- 出勤簿のデジタル化
- 給与明細のペーパーレス化
- 各種申請のオンライン化
外注検討のタイミング
以下のような状況が当てはまる場合、外注を検討する時期かもしれません:
- 月次決算が恒常的に遅れる
- 残業が常態化している
- ミスが増えている
- 本業に支障が出ている
- 従業員から不満の声が上がっている
まとめ:今後の対応方針
- 短期的な対応
- 現行の給与計算方法の見直し
- デジタルツールの導入検討
- 従業員との情報共有強化
- 中期的な対応
- 業務フローの整備
- 外注化の検討
- コスト分析と見直し
- 長期的な対応
- 人事制度の見直し
- 経理体制の再構築
- 働き方改革への対応
成長する企業にとって、経理業務の効率化は避けては通れない課題です。まずは現状の課題を明確にし、自社に合った解決策を見つけることをお勧めします。
無料相談や無料トライアルを活用して、自社に最適なサービスを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
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